導入事例 - 東急リゾート株式会社

【課題】
顧客の情報収集が新聞、チラシからWebへ移行。検討初期層の育成を見据えたWeb施策が課題に。

東急リゾート株式会社は、1978(昭和53)年の設立より全国のリゾート物件(新築マンション、仲介物件、自社売主物件、リゾート会員権)の売買などを行っており、リゾート専業の不動産取り扱い企業としては日本最大の規模を誇ります。そんな同社が別荘の仲介業務に絞ってインバウンドマーケティングの導入を決めた背景には、いくつかの理由がありました。

 

同社 経営企画部の浅羽秀樹氏は「弊社の別荘を購入検討されるお客さまの約7割がWebによる情報収集を経て、お問い合わせをいただいています。一方で初期検討層や潜在層に向けたリゾート系メディアの多くがリーマンショック以降に閉鎖しており、お客さまが必要とする有益な情報を発信できるWeb上の受け皿がほとんどなくなっていたのです」と経緯を説明します。

 

もちろん、従来から自社のWebサイトで物件情報を広く公開していましたが、サイト来訪者数に対してお問い合わせに到達するアベレージが低いという課題も抱えていました。「大半のお客さまがWebで情報収集を行っているにも関わらず、自社サイトでの検討が前に進まない阻害要因は物件の検索に特化したサイト構造になっていたことが原因と考えられました。別荘が“欲しい”方に向けた物件情報はあるものの、別荘を買うための契約手続き、現地見学の方法といった初期検討層、潜在層にリーチする周辺情報が網羅されていない。そこで幅広いお客さまのライフサイクルステージに合わせた情報を発信できれば、顧客満足度が上がり、弊社物件の検討を前進させられると考えたのです」と浅羽氏が語るように、従来のサイトでは検討以前の段階にある顧客を呼び込み、育成するしくみができていなかったのです。

 

ただ、同社では施策に取りかかるにあたり、さまざまな情報を発信して集客することではなく、別のゴールを見据えていました。浅羽氏は「コンテンツを量産して、トラフィックが100倍になったとしても、契約数が変わらなければ投資対効果としては意味がありません。やはり契約まで結びつける展開が重要で、きちんと目標値を設定してプロジェクトを進める必要がありました」と当時を振り返ります。一般的にはサイトに集客ができ、リードが獲得できれば、比例して売り上げも伸びると考えがちですが、すべてに当てはまるわけではありません。とりわけ、現地を下見し、営業担当との商談によってクロージングする別荘という商品の性格上、契約数を目標値に置くことは大前提になるのです。

 

 

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東急リゾート株式会社 

経営企画部 営業企画グループ
リーダー 担当部長
浅羽 秀樹氏

【対策】
明確な目標値を掲げ、社内各所の合意を獲得。スピード感を重視し、ツールには「HubSpot」を選択。

インバウンドマーケティングを導入するにあたり、最初のハードルとなるのが経営層をはじめとする社内の合意形成です。契約数という目標値にこだわった最大の理由はここにありました。浅羽氏は「社内に施策を打つ意味があることを理解してもらうために、現状の課題、施策による効果、契約数の目標値を交えて社内の関係者に説明して回りました。かねてよりWebの重要性、効果に対する周知を行っていたおかげで、説得は比較的スムーズでした」と経緯を語ります。続けて浅羽氏は「よく社内の人間がすきま時間を利用してコンテンツを制作しているという話を耳にします。それで瞬間的にトラフィックが増えたとしても、経営層に対しての理解は得られません。時間とコストがかかる施策ですので、日頃からの社内啓蒙、施策の目標値設定などの前準備は絶対に必要になってきます」と断言します。

 

社内の合意を獲得した同社では、具体的なインバウンドマーケティングを回す仕組みづくりをスタート。当初はシステムの構築から運用まで、すべてを自社内で行う構想で検討を開始したといいます。浅羽氏は「そこでいろんなプレイヤーにお声がけをして相談したところ、HubSpotは私たちがやろうとしていたことがパッケージ化されており、ツールで容易に実現できることがわかりました。それならばゼロから立ち上げる必要はありません。圧倒的なスピード感を実現するため、私たちはHubSpotを利用することにしました」と語ります。同社が選んだツール「HubSpot」は、施策に必要な機能をオールインワンで実装。複数のツールをまたぐ必要のない使い勝手の良さも決め手になったといいます。

 

こうして同社では自社Webサイトとは別にインバウンドマーケティング用のリゾート情報サイト「リゾートSTYLE」を立ち上げます。サイトの軸となるのは顧客の検討度合いに合わせた3本のEブック。このコンテンツを顧客がダウンロードすることで、メールアドレスを取得するしくみになっています。

 

浅羽氏は「初期検討者向けに別荘のエリア、種類を紹介するものがひとつです。次に検討をより具体化するためのチェックリスト。回答を送信すれば弊社の別荘コンシェルジュが診断して最適なエリア、物件をお勧めするものです。そして最後が購入を決めた方に手続き、費用などを解説するもの。契約に至る3段階のステップで情報を分けて掲載しました」と解説します。そして、Eブックに導くための記事を毎月10本程度のペースでアップしていきます。これらの記事は「お役立ち情報」「エリア情報」などの実用性の高い記事から、「楽しみ方」「暮らし術」「インタビュー」といった別荘のある豊かなライフスタイル、趣味を提案する娯楽性の高い読みものまでを広く網羅。初期検討層向けのみならず、別荘に関心の薄い潜在的な顧客をステップアップさせるしかけも組み込まれていました。

【効果】
記事の蓄積、サイトリニューアルで課題を改善。サイト経由後の物件来場率が2.5倍に増加。

満を持してスタートした同社のインバウンドマーケティング施策でしたが、施策を回していくうちに、いくつかの課題が浮き彫りになってきました。浅羽氏は「このままでは当初の目標値に到達するのが難しい状況でした。原因を分析したところ、リゾートSTYLEのトラフィックの大半が自社の本体サイト、あるいはメール配信からの訪問だったのです。そこまで記事の本数が多くなかったので、外部から呼び込むことが難しいのは当然で、それならば本体サイトの「東急リゾート」から誘導する入口をもっと増やすべきだと考えたのです」とリニューアルの経緯を説明します。これまでのようにリゾート情報サイト、本体サイトを独立させて考えるのではなく、一体感を出して相互連携を深めることが今回のリニューアルの狙いでした。また、1年以上にわたり小さなメンテナンスを重ねてきたこともあり、リゾート情報サイト全体の整合性も低下。そのため、サイトの視認性、使いやすさを改善することもポイントだったといいます。そこで同社ではいくつかのプレイヤーにサイトリニューアルを打診。各社の提案を受けて同社がパートナーに選んだのは24-7でした。

 

浅羽氏は「コストや提案内容もさることながら、インバウンドマーケティングへの理解が深く、HubSpotの使い方にも精通している点を高く評価しました。HubSpotに慣れていない会社を選んでしまうと、そこを翻訳して説明する手間が発生します。今回、システム開発に別会社がからんでいることもあり、あまり体制を複雑にしたくない事情もありました」とパートナーの選定理由を語ります。

 

リニューアルの作業は着々と進行し、2015年12月より生まれ変わった本体サイト「東急リゾート」の運用を開始。年が明けた2016年の初旬より、じわじわとリニューアルの効果が現れてきます。本体サイトからの流入経路が増えたことに加え、継続して蓄積してきた記事の本数が増えたことで、本体サイトはもちろん、外部からの流入も増加しました。

 

さらにリニューアルを終えた後にもエリアに特化したEブックを新たに追加するなど、いまなお同社のサイトは進化を続けています。浅羽氏は「弊社の別荘を購入されたお客さまが“別荘周辺のエリア情報、観光情報”を求められていることがアンケートでわかったのです。もっとエリアに特化したコアな情報を届けられるようなコンテンツを追加していくことで、新たな層からのダウンロードを狙っています」と、さらなる高みをめざす意欲をみせます。

 

 

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※リニューアル後の本体サイト「東急リゾート」(左)とメディアサイト「リゾートSTYLE」(右)

 

 

リニューアルからすでに1年を迎えようとしていますが、現在もサイトへの流入数は順調に伸びています。浅羽氏は「8月は昨年と対比で、外部からの流入も4倍近くに増えています。また、リゾートSTYLEを訪れたお客さま、一度も訪れていないお客さまの2グループを比較すると、前者の方が圧倒的に物件を下見に訪れる来場率が高くなるのです。じつに2.5倍の差が出ています」と効果を実感しています。

【解説】
インバウンドマーケティングは一日にして成らず。腰を据えた継続的な取り組みこそが重要になる。

有益な記事を継続的に配信していくことでサイトへの集客を行い、Eブックのダウンロードにつなぎ、問い合わせ、物件の下見に結びつけることが、同社のインバウンドマーケティングのミッションです。浅羽氏は「最終的には契約数というゴールを目指していますが、クロージングするのは営業担当です。今後はお客さまのマーケティング活動の実績を営業担当に展開し、セールスを支援する取り組みを考えています。また、現状のメール一斉配信をお客さまのライフサイクルステージ、エリア、趣味、嗜好に特化して送り分けることも検討中です」と意気込みを語ります。

 

ただ、嗜好品の別荘を購入するお客さまのパターンが無数に存在するため、インバウンドマーケティングにつきもののペルソナの設定が困難で、個別対応の施策は非常に難しいものになります。浅羽氏は「大枠過ぎると一般論でしかお客さまにリーチできず、かといってコアなアプローチをしようとすると作業工数が莫大になります。記事のクオリティにもこだわって配信しているので、これ以上のペースで増やすのは困難です。現在、200本ほどの記事があり、閲覧のパターンは見えつつあるので、いろいろ試行錯誤を重ねているところです」と次なる展開を見据えています。

 

またインバウンドマーケティングを導入、運用する立場から浅羽氏は「インバウンドマーケティングという言葉に踊らされず、自社の活動全般に対する課題を把握して検討を始めることが大切です。また広告宣伝のような特効性もなく、結果を出すまでに1、2年は見ておいたほうがいいでしょう。さらに経営層を納得させる数字を、導入時、運用時ともにきちんと出していくことも重要です」とアドバイスを送ります。

 

さらに施策を円滑に回していくためには、いかにベストなパートナーを選び、良好な関係を作っていくかも重要だといいます。浅羽氏は「HubSpotを国内できちんと扱えるパートナーは限られており、実績、規模で選ぶなら選択肢は多くありません。ツールの内容やコンテンツ制作のコストだけを売り込む会社ではなく、いかに課題に対する具体性のある提案が出てくるかでパートナーは選ぶべきです。また、施策を回すうえで重要なのはクライアント、パートナーが同じ立ち位置で取り組めるフラットな体制をつくること。一方的にパートナーに依頼する体制は思考停止につながり、いいものは生まれないからです」と締めくくります。

 

インバウンドマーケティングを成功させるポイントは、自社の課題を明確化する。ゴールの目標値といった社内合意を得るための具体的な材料を用意する。同じ目線で提案、作業を行うパートナーを選ぶ。そして節目の結果を出しつつ、石の上にも三年の構えで決着を焦らないことです。すでに施策の開始から2年以上が経過し、それなりの結果を出している同社ですが、まだゴールは遥か先にあります。インバウンドマーケティングとは、じっくり腰を据えて挑む長期戦なのです。

 

インバウンドマーケティング

企業名

東急リゾート株式会社

業種
  • 不動産代理業・仲介業
事業内容

リゾート(別荘、土地、マンション、会員制ホテル、ゴルフ会員権)の販売、企画開発、調査、リゾート商品仲介、管理等

従業員数 122名(2016年4月1日)
URL http://www.tokyu-resort.co.jp/