コンテンツ×ブランディング - 2つの方向性によるコンテンツ
- 2015年10月22日 10:45
- インバウンドマーケティング
ブランドとは、企業そのもの、ビジョン、サービス、プロダクト、施設、社会貢献活動、さらにはロゴ、広告など、企業側がある程度コントロールできるものに加えて、そのブランドを知っている人の体験、記憶、好感度、信奉度、クチコミなど、ブランドにまつわるあらゆるものを含んで、形成されています。
ブランド構築、ブランド戦略を踏まえてコンテンツマーケティングを考えた時に、2つのアプローチがあります。それは、すでにあるブランドの姿を伝えていく方法、そしてもう一つがこうありたいと願うブランドイメージを伝えていく方法です。
すでにあるブランドイメージを拡張する
長い歴史のある企業、すでにほとんどの人に認知されている企業については、消費者が直接そのブランドと関わったことがなくても、ある程度のブランドイメージを共有しています。こうした企業は、前者のようなアプローチを通して、まだ知られていない自社の姿、あるいは誤解されている事実を公開していくことで、ブランドイメージを構築していくことができます。
例えば、「ミスタードーナツ」は誰もが知っており、その主力商品であるドーナツについてイメージできるでしょう。しかし、そのドーナツが店舗で手作りされていることは、これまで伝えてこなかったため、ファンですら知らない事実になってしまいました。そこで、新店舗の一部では、厨房が透けて見えるような設計にして、手作りをしていることを伝えるようにしました。
店舗の裏側や工場の仕組み、歴史や変遷などは、自社のこだわりを伝えるコンテンツになり得るものです。サントリーでは、工場見学など体験型のコンテンツに加えて、ブログで工場の様子を伝えるなど、オンラインのコンテンツでも、自社の裏側やこだわりを見せる取り組みをしています。
参考
ダスキンは、「ミスド」をどう立て直すのか コンビニとの激突に新タイプの店で応戦
サントリーウイスキー蒸留所ブログ
目指すブランドの姿を伝えていく
スタートアップや認知度の浅い企業などにとっては、自社がこれから目指す方向性や、ありたい姿を伝えていくコンテンツがブランディングの1つになります。
また歴史のある企業であっても、その企業が目指すところのグランドビジョン、例えば「女性が輝く社会への貢献」「自然環境の保護」など大きなテーマについては、こちらの手法でコンテンツを用意していくこともあるでしょう。すでに実施している企業活動を示す前者の取り組みと異なり、これから実現したいこと、目指す方向性をストーリーを持って語るようなコンテンツやドキュメンタリー風のコンテンツは、ユニリーバやP&Gなど海外の企業でよく見られます。
Dove Real Beauty Sketches
日本でも、ブランディングを意識した動画制作は増えており、カンヌライオンズ(カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル)で受賞しているものもあります。例えばポーラの「Call Her Name」というキャンペーンでは、普段旦那さんから「ママ」「お母さん」と呼ばれている女性を、名前で呼ぶことで「美しさという本能」を呼び覚ます、ということを伝えています。
ポーラ:Call Her Name
上記のポーラの特設Webサイトでは、動画のソースとなる実験結果も公開されており、女性の美しさを引き出すために様々な実験を行っていることを示すことは、先に紹介した手法にも通じるところがあります。
Dove、ポーラとも、ドキュメンタリータッチの動画コンテンツになっていますが、ストーリー性のある動画コンテンツもあります。例えばタイの生命保険会社のCM、東京ガスの家族の絆をテーマにしたCMシリーズなどがあります。
東京ガスの家族の絆のCMについて、たずさわったCMクリエイターの澤本 嘉光氏は、「人が泣くのには15秒は短すぎる。でも1分あれば人は泣くことができる」という考えからあえて長編のCMを制作したことを明かしています。しかし、通常のCM枠としては長すぎるために、週に1回程度深夜の時間を狙って放送するとのこと。視聴者が少なくても、見た人がツイートするので、見逃した人が興味を持って動画で見るというように、自発的なリーチも獲得できているそうです。
紹介したようなコンテンツ作りは、優れたクリエイティブが要求されることがわかります。一方、そのクリエイティブの方向性を間違えてしまうと、そのコンテンツが大炎上し、ブランドの毀損になってしまうことがあります。つい最近では、ある飲料メーカーのストーリー仕立ての動画コンテンツがネガティブな方向で話題になってしまいました。
まとめ:コンテンツはすべてブランドにつながる
今回は、ブランド構築、ブランド戦略へのアプローチとして、2つの方向性を事例を元に考えてみました。
もちろん、冒頭で述べたように、ブランドとはその企業やプロダクト、サービスなどにまつわるあらゆるものを含みますので、紹介したようなコンテンツに限らず、日々のブログでの発信やソーシャルメディアでのコミュニケーションなども含めて、ブランドに影響していきます。ブランディングの視点からも、今一度コンテンツを見なおしてみるとよいでしょう。