crm_contents

コンテンツを書く・編集することは「誰でもできる」作業です。 しかし一方で、自社のWEBサイトやブログメディアなどの運用を任されている担当者の多くは、特に編集やライティングを得意としているわけではありません。その進め方に戸惑ってしまう場合も多いかと思います。「誰でもできる」からこそ、担当者の悩みも多く、意外と奥深い「コンテンツマーケティング」。今回は、編集者として、またウェブディレクターとして、20年以上コンテンツ制作の現場に立ち続けている山田Uさんに、コンテンツの質を上げる方法について寄稿いただきました。

[目次]

コンテンツマーケティング、難しいですね。

……と言い切ってしまうのもどうかと思いますが、やはり、どんなマーケティングの手法も、カンタンに効果が出るわけではありません。程度の差こそあれ、担当者の悩みは尽きないものなのだと思います。

コンテンツマーケティングに関して言えば、よく「コンテンツの質が重要」だと言われます。確かにその通り。つまらない、役に立たないものを作っても、人の心は動きません。

しかし、これも悩みどころです。良いと思ったものが思うほど成果につながらない、ということも多いでしょう。そもそも良いと思うものは人それぞれ違いがありますし、「質」のすべての要素が数値として計測できるとは限りません(今のところは)。

さらに言えば、良い記事(あるいは動画でもなんでも)を作る作業は、どこか本職ではない人には理解できない、秘伝の職人技のように思われてきたりします。日々、果たして自分がそれをできているのか、不安に感じてくるかもしれません。

しかし、質を上げるための有効な方法は存在します。そのひとつが「質問」です。コンテンツの企画をする人が自らに投げかける問い、です。

筆者は多くの編集者やライターの先達と話してきました。そしてそのプロフェッショナルの人たちが、質を上げるために、自らにある種の問いかけを行っていることを学び、それを書き留めてきました。

本記事ではそのなかから、企業のコンテンツマーケティング担当者が、コンテンツの企画をするときに使えそうなものを紹介します。まずは基本にして最重要の3つの質問から。「もうちょっと良い企画にできないか?」と感じた時に、効くはずです。

※「質」という言葉の定義は、議論があると思います。ここではそれをいったん横に置き、「質=読者が読んで良かったと思える度合い」といった意味としておきます。

「読者の立場に立ったらどうあるべきか?」

この視点の重要さは、改めて言うまでもないことです。どのコンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングの教科書にも書いてあるのではないでしょうか。しかし、徹底されているとは言いがたい。それが筆者の観測結果です。

例えば、自社サービスの操作マニュアルを記事にし、自社サイトで公開するとしましょう。 読者の立場に立つ意識があいまいなまま企画・制作を進めると、単に想定している操作手順をなぞるだけのコンテンツができあがります。もちろん、それでも十分に役目を果たすことができるかもしれません。しかし、より高い質を目指すなら、以下のような質問を自らに投げかけていきます。

  • 本当に、読者はそのページを見て、必要な操作を終えることができるか?
  • ただ、こちらが伝えたいことだけを伝えていないか?
  • 読者が疑問に思っているところはどこなのか?
……そう考えると、いろいろなアイデアが出てきます。
  • 記事中で、本文とは別にした用語解説が必要な部分はないか。
  • 参照としてリンクを付けると分かりやすくなる既存のコンテンツはないか。
  • 文字とスクリーンショットより、アニメGIFで表現した方が分かりやすくなるところはないか。
  • これまでユーザーサポートに寄せられた質問から、追記すべきことがらをピックアップできないか。
  • 操作のポイントを、冒頭に箇条書きで3つにまとめたらより分かりやすくなるのではないか。
  • 自社内の未経験者に読んでもらって、記事の有効性をテストできないか
  • ……など。
これらが良いアイデアとは限りませんが、より多くの可能性を検討することは、間違いなく質の向上につながる作業だと思います。

付け加えると、よくあるバッドケースは、筆者が「作れるコンテンツと作るべきコンテンツの葛藤」と呼んでいるものです。現状で「作れる」コンテンツを作ってしまい、読者が本当に必要なものを作っていない。結果として、質が上がらない。上記の例で言えば、本当に作るべきコンテンツは、動画を使った操作マニュアルかもしれません。

かのP.F.ドラッカーは、この相手の側に立つというコンセプトを「それは患者にとって良いことか?」と表現しました。ある病院の最も優秀な看護師が口癖にしていた、何かの意思決定をする時の質問だそうです。

「他で使っていない切り口は?」

切り口、というのは曖昧な用語ですね。よりなじみのある言葉にするとすれば、視点/表現手法/テーマ設定/メッセージの方向性/ターゲット設定……といったところでしょうか。

すでに強大なSEOパワーを持っており、どんなコンテンツでも上位表示させることができるサイトなら、他のサイトと同じ切り口で記事を作っても問題ないかもしれません。しかしそうでないのであれば、他と同じ切り口は、リストの下位に埋もれやすくなります。

また、単純に、新しいものは人の耳目を集めやすいこともあります。新奇性といった学術用語を引き合いに出すまでもなく、見慣れたものは無視され、初めて見るものは印象に残ります。昔ながらの広告のクリエイティブの世界が、常に新しいものを求めてきたのはご存じの通りです。

これは読者の立場に立って、というよりも、作り手の都合、とも言えます。しかし、見てもらえないのでは、マーケティングの目的を達成することは不可能です。また、他と同じようなコンテンツを量産することは、読者に無駄な時間を使わせることにもなりかねません。

つまり通常は、他と違うものを目指す必要があります。あるいは単純に、他より良いコンテンツにする必要があります。

例えば、採用サイトのコンテンツを考えてみましょう。社員紹介のページで、いわゆるインタビュー記事を作るのは普通のことです。その中身によくあるのは、下記のような項目です。よくある、というより、デフォルト項目、と言いたくなります。

  • 学生時代の過ごし方
  • なぜその会社に入ったか
  • どんな仕事をしているか
  • これからのビジョン
  • 1日の過ごし方グラフ
  • 求職者へのメッセージ

……まあ、こういうものが必要なのはわかります。ただ、これだけで終わってしまっては、前述したように、読者の印象に残りづらいのではないでしょうか。

であるならば、質のためにひとひねりが必要です。そこで有効なのが、いわゆる「引き出し」です。世の中でどんな切り口が使われているのか、普段からアンテナを高くし、WEBに限らずさまざまなコンテンツに自覚的に接し、憶えておくことが必要です。

最近筆者が面白いと感じた切り口は、トヨタ自動車の「トヨタイムズ」です。その名の通り、オウンドメディアという本質に、「報道」もしくは「新聞」という新しい切り口を加えたわけです。報道らしく、自社の春闘の様子まで伝えています。まだ始まったばかりで、外部からは施策の効果は推し量れません。どこまで広告宣伝の枠の中から離れられるか、難しいところもあると思います。しかし、オウンドメディアが多くの企業で採用されるなか、ひと味違う、広く注目されやすいものになっているのではないでしょうか。

「他から学べる切り口は?」

これは、「他で使っていない切り口は?」と表裏一体、と言えるでしょう。他のメディアのコンテンツの良いところだけ、コンセプトだけを盗むのです。

もちろん、丸パクリは論外です。しかし例えば、まったく関係のない分野の記事で優れたものを見つけたら、その手法を自分のメディアに使えないかと考えるのはどうでしょう。

例えば、はてなブックマークでは、常にインターネットユーザに人気のコンテンツをリストしています。この中からいくつかを自身で読んでみて、何が人気の理由なのかを探し、その核の部分を自分のコンテンツに流用できないか考えてみてはどうでしょうか。

今、試しに筆者がやってみたところ、ある人気記事では、医師へのアンケートを公開して記事にしていました。これを転用すると、自社でも何かのリサーチをしてみて、その結果を公表する、という切り口が生まれます。WEB上のリサーチサービスは、それほど高価なものではありません。……もっともこれは、新しいとは言えない切り口ですが。

あるいは、上記の採用サイトの例とトヨタイムズの切り口に学ぶとすれば、「報道」の体裁で、実際に大学生に記者になってもらい、社員インタビューを行ってみてはどうでしょうか? いろいろな意味でリアルで、読者にとって本当に役に立つ記事になりそうです :-)

広告業界のレジェンドと言っていい、ジェームズ・W・ヤングは、著書『アイデアの作り方』の中で、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない」と言い切っています。もちろんコンテンツを企画する時でも、この考え方は銘記しておくべきです。

また、この発想法は、メソッド化もされています。その名も「NM法T型」。もしご興味があれば、検索してみてください。

改めて、「質」を考える理由

以上、ベーシックな質問3つをご紹介しました。

マーケティング界の泰斗であるフィリップ・コトラーは、近年のマーケティングの重要な側面として、顧客の自己実現の手助けをすることを挙げました。広義のコンテンツマーケティングもその手法のひとつとしています。

当然、質の低いコンテンツで、顧客の手助けをすることはできません。これが、筆者が質を大事にしたい理由です。

もちろんいつもすべてを理想的な形で進められるとは限りません。実際にはさまざまな制約がつきまといます。「作るべき」でなく、「作れる」コンテンツから進めていくことも多いと思います。”フツー" なコンテンツを作らざるを得ない時もあるでしょう。あるいは、「質」などという曖昧な要素ではなく数値のみを見るのが真理、というご意見もあると思います。

また、当然ながら質というレイヤーだけで成果を生むことは不可能です。より広範囲なコミュニケーションの戦略・戦術や包括的な取り組みが必要です。筆者は残念ながら、そうした大きな絵を描ける人間ではありません。

しかしそれでも、少しでも読者が「読んで良かった」と思えるものに近づけたい。なぜならそれが、コトラーの言う顧客の自己実現につながり、顧客に信頼され、一時的なものにとどまらない関係を築き、数ある競合の中から好きな企業として認められ、結果としてビジネスの成果につながるから。筆者はそう考えて、日々、自分に問いかけています。


より良いものを、という思いと、成果という数値目標との間で、コンテンツ作りの悩みは尽きないかと思います。弊社では、コンテンツマーケティングをこれから始めたい、あるいはすでに実施しているけれどうまく運用できずに悩んでいる企業様のご支援をさせていただきます。オンラインの無料相談会を実施しておりますので、以下フォームからお気軽にお申し込みください!

コンテンツマーケティング無料相談会 
HubSpotについて、もっと詳しく知りたい方はこちら。

ayumi_fukaya執筆:山田U
角川書店情報誌等の雑誌ライティング、編集を経て、古の「マルチメディア」業界、Netscapeができたころのインターネット業界に参加。WEB系制作プロダクション、大手ISPのマーケティング部ディレクター等を経て、現在は「流しのクリエイティブディレクター」。