isi_01株式会社アイ・エス・アイソフトウェアー 代表取締役 前田丈彰氏(左)、マーケティング部 会見卓矢氏(右)

MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入する企業が増えていますが、導入を躊躇している、またはうまく活用できていない企業も少なくないのではないでしょうか。

このシリーズでは、既にMAツールを活用している企業のご担当者に導入の経緯や運用方法、成果などについてお話を伺い、これから活用される企業の一助となるような情報をお届けしていきます。

今回は、統合基幹システム「GRANDIT」など多くのソリューションを取り扱い、企業のシステム構築を長年おこなってきているアイ・エス・アイソフトウェアー様に、同社のマーケティングに対する考え方やMAツールの活用についてお話をお伺いしました。代表取締役である前田丈彰氏自らがマーケティング部を立ち上げ、そこからどのような経緯で現在の仕組みを構築してきたのか。非常に興味深いお話をお聞きすることができましたので、早速お届けしたいと思います。

営業課題を解決するためにMAツールを導入

──御社がMAツールを導入されたきっかけを教えてください。

前田氏:当社の場合は、まさに24-7さんとの出会いがきっかけですよね。2014年だったと思いますが、当時は執行役員としてERPの「GRANDIT」を担当していた時に、「GRANDIT」のような高額な商材をMAツールを使って販売したい、という相談をさせてもらいました。実は、それ以前に2人ほど中途採用で営業担当を採用したのですが、これがうまくワークしなかったためです。

──どういったあたりでつまづいたのでしょうか。

前田氏:パッケージ売りをしている営業をキャリア採用してソリューション営業をさせたのですが、「GRANDIT」は基幹システムですので知識的な部分を含めて難しかったのです。提案先の取締役や執行役員にお話しても、基幹システムというのはその方だけの権限で採用できるものではなく、うまくクロージングが進まなかったのです。当時は、「正直これはシンドイな」と思いましたね。そこで考えたのが、営業を雇うのではなく、社内にいる基幹システムの知識があるエンジニアを営業にした方が良いのではないかと考えました。ただ、エンジニアは営業ではありませんので、営業的な動きをすることはできません。そこで、少しでもいわゆる営業的な動きを減らしつつ、高額な製品を販売するのに、MAツールが使えないかと考えました。その際に、24-7さんから紹介いただいたのが「HubSpot」で、2015年に導入をしました。

──当時はすぐに導入するのではなく、先に課題を解決する必要がありました。

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前田氏:確かにいくつか課題がありましたね。まず、当社にはマーケティングの専門家がいませんでした。また、導入するにあたって、社内稟議をどう通そうか悩みました。当社はITを取り扱う企業ではあるものの、いわゆるBtoBの基幹システム系でしたので、MAツールのようなものへの理解がまったくない状態でした。いわゆるマーケティング施策でリードを獲得して、ナーチャリングして、顧客を育てていくという発想がなかったのです。その考えをどう理解してもらうかという点も大きな課題でした。

──社内の理解をどのように得ていったのでしょうか?

前田氏:実は当時、執行役員として好き勝手にやらせてもらっていまして(笑)、担当していた「GRANDIT」以外の製品でも、プライム顧客をしっかりと獲得していこう、という話になっていたので、勝手に新しい事業部を作って、その下に関連性のある製品の部署を配置してしまいました。その後、先ほどお話したように、営業がうまくいかなくなってしまったので、MAツールを導入するためにどう稟議を通そうか悩んでいたところ、私が新しく代表取締役を拝命するになったのです。「これならば私の判子だけで導入できる」と気づいてしまい(笑)、一気にHubSpotを導入するように進めていきました。

BtoBマーケティングの部署をゼロから作り上げる

──社内ではHubSpotへの理解は順調に進みましたか?

前田氏:これも苦労しました。そもそも他の業務もやりながらHubSpotの導入も進めましたのでなかなか進まない。やはり現場の仕事が優先されてしまうのと、当時はマーケティング部という組織そのものがなかったのも、導入が進まなかった原因のひとつだと考え、マーケティング部を新設しました。ただ、新しくマーケッターを雇うよりは、自社の製品を理解している人をマーケッターにした方が良いと考え、その時に会見に声をかけました。

会見氏:当時、私はまだ入社4年目で、まさにこれからエンジニアとしてやっていこうと思っていた直後でした(笑)。ひとりマーケティング部として活動を始めたのですが、ちょうど子どもが産まれるタイミングだったのでよく覚えています。

そのタイミングで会見さんに声をかけたのは、どのような理由があったのでしょうか?

──MAツールは導入したあとのシナリオ設定などが重要ですが、知見はもともとあったのですか。

前田氏:実は彼がエンジニアをやっていた頃は、直接一緒に仕事をしたことはなかったのです。しかし、社内での彼の評価や、彼が担当していたクライアントさんからのお話を聞いて、彼にお願いすることにしました。ゼロベースで新しい仕組みを作っていく面白さを感じてくれればいいな、とは思っていましたが、その当時は彼がどう感じてくれていたかまでは分からなかったですね(笑)。ですので、私の直下において、他の部署からの介入は遮断する形で、思い切りやれる環境を作るようにしました。

──会見さんはエンジニアとしてキャリアをスタートする中で、マーケッターとしての業務を担当するようになられたわけですが、そのあたりご自身ではどのように感じていらっしゃいますか?

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会見氏:
自分としてはエンジニアでずっとキャリアを形成していくと思っていましたので、当時は違和感がありましたが、逆にマーケティングを学ぶことでマルチなタレントになれるのならば、それはそれでメリットも大きいのではないかとも考えました。当時、エンジニアとしての基礎は身に付いていましたので、スキルは自分自身で磨いていけると思っていました。そういった意味で、新しい領域に飛び込むのも良いことなのではないかと思いましたね。

──2015年にHubSpotを導入されたというのは、業界の中でも比較的早いタイミングだという印象なのですが、どのあたりでMAというツールの情報をキャッチアップされたのでしょうか。

前田氏:その頃、とある経営コンサルティングの会社に手伝ってもらっていたのですが、その会社からの紹介でHubSpotやMAツールというものを知りました。よくよく調べてみるとCMSとしての機能もあり、「これは面白そうだ」と直感的に感じ、導入を決めました。その頃は、プライム顧客の獲得をしていくために、しっかりとブランディングを考えていかなければいけないと思っていました。ただ、ブランディングをやっていくにしても、テレビCMや新聞広告を打てるほどの余裕はなかったので、Web広告に注力していくことにしました。ところが当時は自社サイトの作りがひどかったので、まずはそこから改善を図っていく必要がありました。当時はそれらの改善で「効果が出るかどうか?」なんて考えず、「効果を出していかなければならない」と結構必至でしたね。

マーケティング部が主導するセールス体制の構築

──御社の場合、マーケティング部が各事業部のマーケティングをすべて担当しているという形になりますでしょうか?

前田氏:現在はそれぞれの製品やサービスを担当している各部ごとにマーケティング担当を配置し、それをマーケティング部の方で取りまとめている形になります。定期的にミーティングをおこないながら、いろいろな改善を図っていますが、まだまだ十分にワークしているとは言い難いですので、今後はマーケティング会議を全社レベルの位置づけに昇格させる予定です。当社としてはマーケティングはそれだけ重要に考えていまして、ここはしっかりとやっていかなくてはいけない点だと思っています。

──MAツールを使った失敗事例として多いのが、リードを獲得する部隊、インサイドセールスをしかける部隊…といったように部門を縦で切りすぎて、セールス部隊にたどり着く頃にはリードの質がひどく悪い、ということが多いのですが、御社はMAツールを活用されるにあたりそのあたりはどうお考えでしょうか?

前田氏:他社さんの場合、営業部とマーケティング部ですと営業部の方が力が強いことが多いと思いますが、当社の場合は逆にマーケティング部の力が強いのが特徴だと思います。その失敗事例ですと営業部がマーケティング部に「リードの質が悪い」とクレームを上げるのだと思いますが、当社ですとマーケティング部が営業部に「早く電話してください」とクレームを上げていくくらいですので、そういった事例のようなことは回避できています。

──顧客に近い営業部の方が発言力が強くなる傾向にあると思いますが、それは珍しいですね。

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前田氏:
問い合わせが来た時は、まずマーケティング部として会見が問い合わせ内容から選別して、すぐに電話をかけていきます。いわゆるインサイドセールス的な動きですね。そこから得た情報を元に、マーケティング部の方で営業部への顧客の振り分けをおこないます。この流れは狙ってできたわけではなく、自然と作られていったのですが、そのおかげで先ほどおっしゃられていたような失敗事例は発生していないと思っています。

エンジニア出身者がマーケッターに転身するメリット

──よく「どういった人をアサインしたらマーケティングがうまくまわりますか?」と質問を受けるのですが、お二人はこのあたりどうお考えでしょうか?

前田氏:まず好奇心がある人。そして先輩たちに対しても物怖じしない人でしょうか。マーケティングは物を売る一番の始まりですので、そこからゴールをイメージできるかは重要だと思っており、当社の例でいきますと、会見のようにエンジニアとして物を売ることのゴールを見てきた人間をアサインすることで、スタートからゴールまでのイメージがつきやすくなりますから、これは正解だったのではないかと思います。あと、これは完全に後付けですが、会見はプログラミングができますので、自分が考えたマーケティング施策をそのままWebサイトで表現できるのは大きなポイントだと思います。さまざまな施策を内部で作ることができるのは、スピードも費用的にも大きなメリットです。逆に、マーケティング経験はあまり重要ではないと思います。

会見氏:2タイプの人間がいると部署としてうまくワークすると思います。ひとりは真面目でコツコツとやっていく人。そしてもうひとりは効率化を図って生産性を上げていく人。この組み合わせがペアになっていると良いのではないでしょうか。私自身が手を抜きながらやってしまうタイプですので(笑)、しっかりと正確に業務を遂行していくタイプの人に支えてもらえると非常にありがたいです。逆に、私のような人間が、愚直にやりすぎている人にアドバイスしたりもできると思いますし、そういった組織ですといろいろなことにトライできそうですよね。マーケティングは、効率化を求めた結果、泥臭い仕事が増えていると思っていますので、泥臭くできる人と効率化を図っていく人のペアが一番相性が良いのでは?と最近特に感じています。

「マーケティングファースト」を社内に浸透させる

──次に、現在のHubspotを使ったコンテンツ作りについて教えていただけますでしょうか?

会見氏:最初は特に苦労しました。というのも、コンテンツとなるものが社内にまったくなかったのです。普通は営業資料などをコンテンツ化するところから始まると思うのですが、エンドユーザーに対して営業というものをまったくしてこなかった会社ですので、営業資料すらなかったのです。提案資料等もまったくなかったので、必至で各ソリューションの案内資料を作りました。「最初はWebサイトのコンテンツを作っていきましょう」と営業部にも言っていたのですが、最近は「営業で使える資料を作りましょう。それをWebサイトでも公開しましょう」という形に変えました。こうすることで、営業部の動きも非常に良くなりました。

前田氏:コンテンツ作りはなかなかシンドイですよね(笑)。例えばブログを現場の人間に書かせているのですが、忙しすぎて更新が止まってしまう。ならば外部の方にお願いしようとなると、取り扱っている商材が難しいこともあり、ギブアップされてしまったこともありました。現在は「GRANDIT」を導入いただいたお客様を回って、事例紹介を多く掲載することで、Webサイトのコンテンツを整備するようにしています。Webサイトのコンテンツは、個人的にはあまり真面目過ぎず、少し遊び心が入ったくらいのコンテンツが良いのではないかと思いますが(笑)。ただ現在はコンテンツ作りは絶対に内製でいこうと決めています。

──現在抱えていらっしゃる課題を教えてください。

前田氏:年2回の全社会議では「マーケティングファースト」という話を必ずしているのですが、当社はほとんどがエンジニアばかりなこともあり、マーケティングというものがどういうものか、全社的に伝わっていないのが課題です。しかし、スタートしてから現在まで問い合わせ件数は6倍以上に増えており、中には「こんな会社から問い合わせが来るのか」と驚くようなものもあり、そういった事例が多くなってくるとマーケティングの重要性を実感してくれるはずです。ただ、商材が商材なだけに、まだまだ直帰率も高いですからこのあたりはWebサイトのコンテンツを含め、改善していかなくてはいけないと考えていますし、社内でマーケティングの重要性を言い続けることで、マーケティング部と営業部がうまくワークするような仕組み作りを続けていく必要もあると考えています。

株式会社アイ・エス・アイソフトウェアー
株式会社アイ・エス・アイソフトウェアーはお客様オリジナルのシステム開発と、パッケージシステム導入の両方で各企業の現場の実情にあった最適なIT環境を提案します。
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ワークスタイルを変革し、業績にインパクトを与えるIT基盤を構築しましょう。

聞き手:株式会社24-7 COO 草皆 直人(くさかい なおと)
執 筆:佐藤 昭平(さとう しょうへい)