MAツール活用最前線:データクレンジングの重要性を実感。ゼロから学び、一気通貫で構築してきたマーケティング環境とは(株式会社MyRefer)
- 2019年07月16日 07:50
- マーケティングオートメーション, MA活用最前線, Marketo
株式会社MyRefer 取締役COO 細田亮佑氏
MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入する企業が増えていますが、導入を躊躇している、またはうまく活用できていない企業も少なくないのではないでしょうか。
このシリーズでは、既にMAツールを活用している企業のご担当者に導入の経緯や運用方法、成果についてなどお話を伺い、これから活用される企業の一助となるような情報をお届けしていきます。
昨今、社員の知人や友人を紹介・推薦してもらい、選考をする採用手法として高い注目を集めるリファラル採用。そのリファラル採用を活性化させるツールとして、企業導入社数No.1を誇る「MyRefer」を開発する株式会社MyReferにて、MAツールを活用した仕組み作りから導入、運用まで手がけている取締役COOの細田亮佑様にお話をうかがいました。
パーソルグループからスピンオフ、「MyRefer」の成長をさらに加速
──まずはじめに、株式会社MyReferについて教えてください。
株式会社MyReferは、「つながりで日本のはたらくをアップデートする」をビジョンとして掲げており、リファラル採用を活性化させるためのクラウドサービス「MyRefer」を提供しています。現在は、500社以上の企業に「MyRefer」を導入いただいています。
会社の成り立ちとしては、2015年にパーソルグループの社内ベンチャーとして立ち上がり、2018年8月にパーソルグループからスピンオフする形で株式会社MyReferとしてスタートしました。インテリジェンスグループ(現パーソル)からのスピンオフはサイバーエージェント以来、20年ぶりとなります。
──当時の組織の規模感はどのくらいだったのでしょうか。
2018年8月の時点では15名ほどです。それから約1年経過し、現在は28名ですので2倍くらいの規模になりました。
──社内ベンチャーでスタートして、スピンオフするに至った理由には、どのようなことがあったのでしょうか。
いちばんの目的は「MyRefer」がサービスとして日の目を見るようにするためですね。大企業の中だとイノベーションのジレンマがあったため、サービスを従来以上に加速して展開していくためのスピンオフになります。
各種ツールを機能的に配置し、一気通貫のマーケティング環境を実現
──スピンオフされる以前からMarketoを活用されていたんですね。導入の経緯を教えていただけますか?
顧客のMyReferへの接点状況をWeb上でもリアルタイムに把握がしたかったですし、ABMツールや、チャットツールと連携させたり、お客さんのフェーズや属性、Web上の行動に合わせてマーケティングや営業チームがコミュニケーション方法を変えることが目的だったからです。
──細田さんは、マーケティングやMAといった知見はどのようにして溜めていかれたのですか?
最初は2~3年前ですかね。パーソルグループでSalesforceを導入したものの、初期設定から何から、何もわからなかったので、toBeマーケティングさんに協力いただき、CRMとはなんぞといった本当に基礎の基礎の部分をいろいろと教えていただきました。その後は分からないことが出てきたらつど、セールスフォースのサポートセンターにしつこいくらいに問い合わせをして、ひたすら質問していました。 半年くらい経て、CRM全体の仕組みや設定を把握できるようになり、実現したいことができるようになってくると、今度はMA側で実現したいことが山のように出てきました。 あとはCRM同様にMarketoに詳しい方々に聞いてまわって実装して…の繰り返しです。
──現在、御社でのCRMやMAに対しての基本的な考え方を教えてください。
基本は、CRM(Salesforce)とMA(Marketo)とABM(FORACAS)がインフラになっています。Marketo側ではメールマーケティングやスコアリングはもちろんですが、スマートキャンペーンやウェブフック機能などはよく使っています。例えば、われわれの注力顧客のWeb上のアクティビティをSlackに送信して営業が優先的に、かつ即時顧客対応ができるようにしています。CRM(Salesforce)では、各取引先に関連する活動情報とGoogleカレンダーを連携できるrakumoを使って、カレンダーにタスクや顧客訪問スケジュールを自動反映できるようにしているなどです。
この仕組みを使って、顧客の興味喚起、リードジェネレーション、ナーチャリング、商談作成、フェーズ管理、営業活動、見積、契約、納品・請求、次回継続契約までの一連の流れをSalesforce上で管理できるようになっています。
──CRMやMAは、導入を決めてから実際に活用できるようになるまで非常に時間がかかった、と言う声も多く聞かれますが、御社の場合はいかがでしたか?
たしかにそういった声を聞いたり、実際に相談されたりすることもあります。 例えば、Salesforceは基本パックとして必要な要素はある程度用意されていますが、「一つひとつのデータがどういった意味を持っているか」、また「それらのデータをどう管理すれば良いのか」、といった部分をすぐに理解するのは難しいと思います。急にSalesforceという大きな箱をドン!と渡されても分からないでしょう。実際、当社もそうでした。第一歩は、それまでエクセルで管理していたものをSalesforceで管理していくようにしただけでした。 そのうち、そこに商談のデータが入力されたり、さらに担当者のデータを追加したり、商談のフェーズによって適したワークフローを組んだりと、自分起点だけでなく現場からもさまざまな要望が出てくるようになりました。それらを実装し続けて今の形になりました。
まずは自分たちがそういったツールを使って何をやりたいか、しっかりと決めておくことが大切だと思いますが、そもそも何ができるかわからないという話もあると思うので、そのへんジレンマですよね。
ツールを導入する際に最初におこなうべきは「データのクレンジング」
(右)同社細田氏、(左)聞き手・株式会社24-7 COO 草皆直人
──CRMやMAツールを導入する際に「最初はどこから手をつければ良いのか分からない」という声も多く聞かれます。細田さんはこの点はどのようにお考えでしょうか。
まずやるべきなのは、データのクレンジングですね。データの整理は非常に重要で、その後のすべてに紐付いてきます。例えばデータの拡張や外部システムとのつなぎこみ、レポーティングや効果検証など、このデータクレンジングが各事業のPDCAに深く結びつきます。
私も最初はそういったことも分からず、しっかりとデータの整備ができていなかったので、企業や人に紐付くいわゆるデータの重複が多く出てきてしまいました。Salesforceでデータを引っ張ってきて事業分析をしようにも、ノイズデータが多ければ多いほど精緻な分析ができません。その際に、データのクレンジングの重要性に初めて気付かされました。
──具体的な例を教えていただけますか?
シンプルに1顧客1法人をどう管理するかということです。ビジネスモデルによっては、店舗ごとや事業者ごとに個別に売り込みに行くこともあると思います。そういった上下や大小の関係をしっかりと階層化して、その階層ごとに管理したいデータイメージを持っていることが大事です。
──極端な話ですが、同エリアで同じ会社名が存在したらどうしますか?
名刺情報を検索して、同じ名前の違う会社に一斉メールを配信してしまったりしたら大変なことになります。 または、●●の商品に対して受注率の高い顧客の業種や従業員の属性をピボットしたいと考えたときに、データの入力規則や配置方法は考えねばなりません。
──御社ではFORCASを活用されているとのことですが、データクレンジングの観点からも、そういったサービスの活用が必要だったということでしょうか。
そうです。設立1年目ですので、われわれは何も情報を持っていませんでしたし、FORCASやTSR、ランドスケイプなどの外部データを活用させてもらってはじめて、データクレンジングできた話だなと思ってます。
スコアよりストーリーで語る「MyRefer」流のインサイドセールス
──では、少し視点を変え、御社のインサイドセールスについて教えてください。
当社では「インサイドセールス」という呼び方はやめて、「ナーチャリングプロフェッショナル」という名称を使っています。
当社のナーチャリングプロフェッショナルは、文字通りナーチャリング専任部隊です。われわれと親和性の高いエンタープライズ系のお客様が持つ課題や制度設計に関する問題について、お客様とコミュニケーションを取り、例えばイベントを企画したり、ホワイトペーパーを作ったりといったことを設計して、お客様をナーチャリングしていくといった役割になります。そういった意味では、比較的マーケティング要素が強いものになりますね。あくまで電話やメールは手段なので。
他の企業ですと、マーケティング担当がリードを創出して、インサイドセールスがナーチャリングをして、時にはそのまま商談をおこなうこともあります。その後、フィールドセールスに引き継いで刈り取る、といったフローが多いと思いますが、当社の場合はマーケティング&ナーチャリング部隊というイメージでいます。その部隊が温めるだけ温めたら、実際に往訪するアカウントコンサルティングと呼ばれる部署にパスするというフローになっています。
──最近、インサイドセールスというワードがよく聞かれるようになった背景として、「スコアリングの限界」を感じている人も多いように感じます。例えば、スコアリングの定義によってピックアップされた企業があるものの、PDCAを回してもなかなか実感が得られない。一方で、インサイドセールスが実際に電話を使って得た情報の方が精緻だったといったようなギャップを感じられたことはないでしょうか?
ナーチャリング部隊が温めきったと思っているお客様をまったく刈り取れなかったり、逆に往訪にいったらすぐに発注に至ったり、といったことは正直あります。社内のちょっとしたコミュニケーションの齟齬が原因で発生することもありますよね。
ただ、当社はスコアリングを起点にしてコミュニケーションをとるようなことを今はしていません。例えば、マーケティングからフィールドセールスに「このお客様は非常に熱いから何点だ」みたいな情報が渡されて、それによって周囲が共感できるなら良いのですが、点数だけ教えられても実感値はないと思います。共感できるかどうかは、そこにストーリーがあるかないかではないでしょうか。
当社は何点といったスコアではなく、お客様の状況や使っているツールや、現在の課題感などをナーチャリングプロフェッショナルが文章にしていきます。スコアはこれをデジタルに検知するものだと思いますが、当社ではこういった文章化されたものをフィールドセールスに渡すことができる仕組みを構築して回しています。もちろん、企業の事業形態やマーケットの規模、商品によってはスコアもすごく有効だと思います。
──スコアリングの数値のみではなく、顧客個々のストーリーも重視されているのですね。本日は貴重なお話、ありがとうございました!
MyReferについて |
聞き手:株式会社24-7 COO 草皆 直人(くさかい なおと) |