uzabase-1-top株式会社ユーザベース セールス&マーケティングチーム マネージディレクター 西川翔陽氏(左)、マーケティングチーム リーダー 伊佐敷一裕氏(右)

MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入する企業が増えていますが、導入を躊躇している、またはうまく活用できていない企業も少なくないのではないでしょうか。

このシリーズでは、既にMAツールを活用している企業のご担当者に導入の経緯や運用方法、成果などについてお話を伺い、これから活用される企業の一助となるような情報をお届けしていきます。

今回登場いただくのは、株式会社ユーザベース セールス&マーケティングチーム マネージディレクター 西川翔陽氏、マーケティングチームリーダー 伊佐敷一裕氏です。お二人は、企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA(スピーダ)」のマーケティングを担当されており、MAツールはMarketoを活用しています。

プロダクトの成長により、マーケットが変わった。そのタイミングでMAを導入

──SPEEDAについて教えてください。

伊佐敷氏:世界中のさまざまな企業・業界情報を1つに集約して提供する法人向けプラットフォームサービスです。SPEEDAでは企業情報、業界レポート、市場データなどのあらゆるビジネス情報をカバーしているので、情報収集と分析のための時間を削減でき、業務の質とスピードを向上させられます。コンサルティングファームや投資銀行などプロフェッショナルの方をはじめ、事業会社の経営企画や営業企画部門のご担当者など、ビジネス情報を収集し、それを元に意思決定をおこなう方にご利用いただいています。

SPEEDA(スピーダ)

──プロジェクト体制について教えてください。

伊佐敷氏:顧客に向き合うフロントチームとして、マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセス・サポート、セールスサポートの部門に分かれています。基本的に、マーケティング部門で獲得したリードを、インサイドセールスが育て、営業部門に渡しています。

営業部門はユニットに分かれていて、大企業や業界に特化したアカウントセールスを担当するユニット、インサイドセールスからのリードを担当するユニットなどがあります。

──MAを導入するまでの背景について教えてください。 

西川氏:Marketoは2016年に導入しました。導入のきっかけはSPEEDAがフィットするマーケットが変わってきたことでした。SPEEDAローンチ当初は創業メンバーや営業部門の繋がりや口コミから、コンサルティングファーム、投資銀行などを中心に導入が進んでいました。その後は、既に導入したお客様からのご紹介で検討している企業からお問い合わせがあり、営業が対応していました。この頃はマーケティングからのアプローチはほとんどありませんでした。

次の段階で事業会社の経営企画部門、営業部門などに導入が広がり始めた中で、どういう事業会社、部署にフィットするのか探っていました。見込み客の母数が増え、一人当たりの営業が担当するお客様の数が増えていきましたが、コミュニケーションの質を落としたくない。そこで、CRM、MAを活用して効率的でありながら、見込み客に合わせたコミュニケーションをしていこう、ということになりました。

もともとCRMはSalesforceを使っており、MAはMarketoを導入することになりました。

担当者の知見はゼロ。独学と社内のメンバーからのアドバイスで試行錯誤しながら活用

──数あるMAツールの中で、Marketoに決めたのはなぜでしょうか。

西川氏:Marketoはコミュニティが強くて、ユーザーが活発に情報交換をしているのに加え、オンボーディングプログラムもしっかりとした設計がされていて、ナレッジが溜まりやすそうだと思ったからです。また、営業担当の方の対応が良かったこともあります。

──MAツールは導入したあとのシナリオ設定などが重要ですが、知見はもともとあったのですか。

西川氏:ありませんでした。Marketoの導入研修を受けたことと、コミュニティの情報を探りながら、前任者がゼロベースで学んでいきました。

──伊佐敷さんは、導入後に入社されたんですね。Marketoの知見はお持ちでしたか?

伊佐敷氏:前職もマーケティング部門におり会社でMarketoを使っていましたが、運用担当ではなかったので、MAツールとしての基本的な機能くらいしか知りませんでした。そのためほとんど知識はない状態でした。

今も使いこなしているとは思っていません。まずはセオリー通りのシナリオを試して、結果を見て改善することの繰り返しです。まだ国内の成功事例は少ないですし、必ずしも事例と同じ成果は簡単には出ないので、試行錯誤しながら自社のベストを見つける必要があります。

マーケティングは、人の心と接する仕事ですから、テクニカルな部分だけ他社事例を真似するよりも、自社のお客さまとの接点でより良いコミュニケーションを考えることが重要だと思っています。 あとは社内に「Marketo Champion*」の表彰を受けたメンバーなど豊富な知見を持っているメンバーが多数いるので、そういったメンバーから教えてもらうこともあります。
*Marketoを使いこなしている人を表彰するマルケトの制度

──導入初期にどんなことで苦労されましたか?

伊佐敷氏:UIが独特なので慣れるのに時間がかかりましたが、慣れればわかりやすいですね。また、顧客データのクレンジングはいまだに課題意識をもっており、MAで収集したデータ、もともとCRMに入っていたデータ、名刺データなど、それぞれデータの項目や形式が異なるので、それらの整理や統一が大変ですね。

弊社には顧客データの管理や契約業務を専門に担っているチームがあり、彼らと営業、マーケティングで一緒にデータのクレンジングを進めています。Salesforceで一部プログラミングなどが必要なので、そのスキルがあるメンバーの力も借りています。

──マーケティングと営業の方とは別に、クレンジングを担当される方がいらっしゃるんですね!

 

インサイドセールスがしっかり機能して、マーケと営業をつなぐ

uzabase-1-isashiki株式会社ユーザベース マーケティングチーム リーダー 伊佐敷一裕氏

──リード獲得のための集客ではどういった施策をやっていますか?

伊佐敷氏:オンライン広告が主要な集客経路です。あとは、指名検索ですね。オウンドメディアもあり、指名以外のオーガニック検索経由でも集客していますが、これらはあくまでサブ的な位置づけです。

オフラインの施策では、展示会への出展に力を入れてます。セミナーを開催することもありますが、現状はこちらもサブ的な取り組みになっています。

──リード獲得後のナーチャリング施策ではどういったことをやられていますか?

伊佐敷氏:お問い合わせ、トライアル、資料ダウンロードは、すぐにインサイドセールスが電話をして、営業につなぐようにしています。獲得したリードに対して、シナリオを組んで自動的にナーチャリングを行う施策はあまり行っておらず、MAは単発的なメール施策や一部のステップメール、行動履歴の取得と内部通知用に活用しています。

展示会やホワイトペーパーダウンロードで獲得したリードには、ステップメールを送る施策をやっていますが、MAと呼べるような自動的なナーチャリングはこれからですね。

──リードを獲得してから成約までの期間は、どれくらいみられていますか。 

伊佐敷氏:商談のアポから契約までは1−2ヶ月くらいでしょうか。トライアルの申し込みはホットなリードなので、素早くレスポンスをしています。それはインサイドセールスの強みですね。電話とメールのコミュニケーションが地道ながら強いので、Marketoを活用しながら進めています。

──インサイドセールスの方のMarketoの活用について、詳しく教えてください。

伊佐敷氏:獲得したリードは、弊社のグループ会社が提供しているサービスの「FORCAS(フォーカス)」で、データの名寄せ、業界、企業情報などの付与をしてからMarketoに入り、その後Salesforceに入るという仕組みになっています。ですので、基本的にインサイドセールスは、Salesforceの情報を見ていますね。一部のメンバーはMarketoで、ユーザーのオンラインの行動やスコアリングを参考にしています。

なお、リードのオンライン行動で特定の行動があると、Slackに通知するようにしています。通知があったリードにはすぐにインサイドセールスが連絡するので、タイミングを逃さないようにしています。Slackとの連携が柔軟にできるのはMarketoのメリットの1つです。

──Marketoに限らず、SlackとMAを繋げて活用している企業も増えてますね。

 

システムを活用して、より顧客に寄り添うコミュニケーションを実現する

──営業の方はMarketoをどのように活用されていますか?

西川氏:Marketoのセールスコネクトという新サービスのパイロットプログラム*を利用しています。営業担当者のパフォーマンスが数値化されて、コミュニケーションの良し悪しが判断できるものです。使い始めたばかりですが、思想として良いなと思っています。
*まだリリースされていない機能が限定的に提供されたもの

営業の独りよがりではなく、お客さまにどんなメッセージが響くのかがデータとしてフィードバックされるので、個人としても組織としても気付きになります。SPEEDAで更なる成長を実現していく中で人材育成が課題ですが、データがあることで再現性の高い成功するセールスプロセスが分かります。反対に、どこでつまずいているかもデータでわかりますので、暗黙知になりがちなセールスナレッジが形式知として蓄積できます。例えば、メールのテンプレートを作ってそのパフォーマンスが分かるので、効果的なものを採用するといったことです。

ただし、誰にでも定型文を送ればいいわけではありません。良い数値が出ていても、ニーズが低い方もいるわけですから、下手をしたらブランド毀損につながりかねません。それを分かった上で使うのが大事だと思います。

──詳しくお話しいただき、ありがとうございました。MAについて、今後はどんな活用をしていきたいですか。 

伊佐敷氏:MAの理想とする、ユーザーのカスタマージャーニーを描いて、そのステージごとに適切なコミュニケーションを自動化するということができていないので、その実現のために試行錯誤しています。

ただ、完全にオートメーション化するだけでなく、顧客とのコミュニケーションでは直接の会話がより大事なので、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスのとるコミュニケーションを総合的に考えて成果を生みやすい形を模索したいです。MAだけですべて解決するよりも、お客さまとのコミュニケーションのためのサポートツールとして、更に活用していきたいです。

 

MAを活用するための組織とは

ユーザベースさんにおけるMA導入の背景、その活用方法についてお届けしました。後編では、MAを活用していくために重要な組織、チーム体制についてご紹介します。特別な教育システムを設けていないユーザベースさんが、唯一こだわっているルールとは?

後編:<MAツール活用最前線:チームの強さの基盤はミッションとバリュー(株式会社ユーザベース)>

聞き手:株式会社24-7 COO 草皆 直人(くさかい なおと)
執筆:深谷 歩(ふかや あゆみ)