MAツール活用最前線:チームの強さの基盤はミッションとバリュー(株式会社ユーザベース)
- 2019年06月28日 07:50
- マーケティングオートメーション, MA活用最前線, Marketo
株式会社ユーザベース セールス&マーケティングチーム マネージディレクター 西川翔陽氏(左)、マーケティングチーム リーダー 伊佐敷一裕氏(右)
企業・業界情報プラットフォーム「SPEEDA」を提供する株式会社ユーザベースでは、MA(マーケティングオートメーション)ツール「Marketo」を導入しています。
MAツールの活用方法についてお届けした前編に続き、後編は、マーケティングに関わるメンバーの教育や採用、チーム作りについてご紹介します。株式会社ユーザベース セールス&マーケティングチーム マネージディレクター 西川翔陽氏、マーケティングチーム リーダー 伊佐敷一裕氏にお話を伺いました。
確度の高い顧客に集中するために、インサイドセールスが必要
──前回のお話で、マーケティングで獲得したリードへの初期対応や、特定の行動があったリードへの対応はインサイドセールスが行っており、コミュニケーションにおいて重要な役割を担っているとのことでした。
インサイドセールスは、マーケティングリードの質の向上、営業の効率化のためにも重要な役割ですが、多くの企業ではまだ「インサイドセールス部門がない、あっても強くない」というところも多いと思います。どうやって体制を強化しているのか、教育のノウハウなどを教えてください。
西川氏:体制強化の前に、インサイドセールス部門を構築する理由を明確にし、役割・権限をその理由にアラインしたものにすることが大事だと思います。私たちがMAツールを導入したときの課題として、マーケットが変わってきたことを前回お話しました。
SPEEDAの顧客層が広がったことで、お客さまへの提供シナリオが複雑化しました。そのため、営業が初訪時にヒアリングするべき項目が増えてしまったのです。ヒアリングが増えると、お客さまと対面で話す時間の価値が下がってしまいます。
そこにインサイドセールスが入って、先にある程度必要な事項を聞き出しておけば、営業の対面ではそれぞれのお客さまに則した情報提供ができるので、商談時の提供価値を増やせます。また、インサイドセールスで相手のニーズに我々のサービスがマッチしないことの見極めができれば、フィールドセールスが訪問する必要がなくなりますから、こちらもお客さまもお互いの時間を無駄にしません。インサイドセールスでは、複雑化するお客さまのニーズを理解すること、その理解をフィールドセールスにインプットすることを目指しています。
よく、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの部門間で断絶があるという話がありますが、その断絶はお客さまには意味がありません。弊社の場合はインサイドセールスが、マーケティングとフィールドセールスの間をつなぐことで、お客さまへの理解が深まり、より良い提案ができるようになりました。これは弊社のケースですが、インサイドセールスが担える役割はさまざまです。
ですから、インサイドセールス部門を作るなら、まずその目的を深く考えることが必要だと思います。逆に言うと、インサイドセールス部門の確立に苦戦している企業は、目的が不明瞭であったり、事業課題に合致していないことがほとんどのように見受けます。
──インサイドセールスは、エース級の社員が配属されることは少なく、場合によっては外部への委託という場合も多いようです。御社の場合は、どういった人材が担当していますか。
西川氏:今は、相対的にキャリアが浅めの若手のメンバーが担当しています。ただし会社として、どの部門でも活躍できてキャリアを極められることを念頭においているので、インサイドセールスがキャリアのファーストステップという位置づけではありません。グローバルでは、セールス人材の半分くらいがインサイドセールスで、給与水準や求める事業インパクトもハイレンジであることが珍しくありません。日本ではまだ市場がそうなっていないので、我々が先駆けてインサイドセールスの地位を上げていければ良いですね。
ミッションとバリューに基づいて自律的に意思決定ができる組織を作る
株式会社ユーザベース セールス&マーケティングチーム マネージディレクター 西川翔陽氏
──マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスそれぞれで、お客さまとのコミュニケーションの教育、標準化においてどういった取り組みをされていますか?
西川氏:弊社には、社員全員が大切にしている7つのルールがあり、これが会社のバリュー(7つのルール)となっています。
- 自由主義で行こう
- 創造性がなければ意味がない
- ユーザーの理想から始める
- スピードで驚かす
- 迷ったら挑戦する道を選ぶ
- 渦中の友を助ける
- 異能は才能
7つのルールは原理主義ではなく、迷った時や悩んだ時に立ち返るような、私達にとっての心のよりどころ、行動指針のようなものです。全員がこのバリューを常に意識しています。事業上や組織の課題も、7つのルールをベースにできる限り議論するようにしています。
お客さまとのコミュニケーションについても、1つに決めてしまうのではなく、事業のフェーズによって変わっていくので、バリューをベースにフラットにオープンにコミュニケーションする中で決めています。オープンコミュニケーションの構成要素として、4つあると私は考えていて、①自分を客観的に捉える、②他人を客観的に捉える、③その上で他の人のフィードバックを受け入れられる、そして、④フィードバックができる。私たちは、それを高いレベルで実現することが重要であると考えています。
マニュアルで決めるよりも、自走して考える、チームが同じ方向に向かいながらディスカッションできるようにしています。マニュアル作りに意識が向きすぎるとそこにリソースが取られ、市場の変化に追従するスピードが損なわれることが懸念されますから、細かい部分は現場で意思決定をして改善しています。
人材採用、評価でもミッションとバリューが大前提
──マーケティング、インサイドセールスの採用をするときに、求める人物像、スキルなどはありますか。
伊佐敷氏:採用するときは、バリュー、ミッション、スキルという優先順位の中でマッチするかどうかを見ています。「経済情報で、世界を変える」というミッションやバリューに対して共感があるかを前提としています。
西川氏:SPEEDAのミッションにおいては、ビジネスパーソンに向けて適切な経済情報を提供することで、顧客企業のパフォーマンスを高めてもらい経済が豊かになるプロセスを作ることを、仕事として成し遂げたい意志があるかどうかを面接で聞いています。採用した時点で、ミッション、バリューに共感していることを確認しているので、日々の仕事をする判断でも、常にここから考えています。
また、人事評価では、年に2回、他のチームも含めた周囲のメンバーから360度評価によるフィードバックがあります。その評価でもバリュー軸を厳しく見られています。
──ミッションとバリューが組織に浸透していることで、定型化されたマニュアルや教育制度がなくても成果を出せるんですね。組織づくりとしてもとても参考になるお話でした。ありがとうございました!
前編:<MAツール活用最前線:インサイドセールス・営業のMA活用術(株式会社ユーザベース)>
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聞き手:株式会社24-7 COO 草皆 直人(くさかい なおと) |