HubSpotのCEOが語る5年間の変化

2014年9月2日に HubSpot 社の CEOブライアン・ハリガン氏とダーメッシュ・シャア氏著の「Inbound Marketing : Attract, Engage, and Delight Customers online」が発売されました。本書は2009年に刊行した「インバウンド・マーケティング」の改訂版です。初版が発売されてから5年が経った今、インバウンドマーケティングを取り入れる企業は急増し、以前よりその概念は広まったように感じます。

顧客の購買活動の変化によって進化し続けるマーケティング。改訂版を読んでお客様に見つけられる・好かれる仕組みや方法により磨きをかけませんか?( 2014年9月現在では、英語のみの刊行 )

初版での失敗や5年前にはなかった新しい概念、これからのインバウンドマーケティングの可能性について書かれている、The Sales Lion の Marcus Sheridan氏執筆のブライアン・ハリガンCEOへのインタビュー記事「HubSpot CEO Discusses Inbound Vs Content Marketing and the Future of Digital」を訳しました。普段聞けない情報が盛り沢山のとても興味深いインタビューです。

HubSpot CEOが語る「インバウンドマーケティング対コンテンツマーケティング」と「デジタルの未来」

2009年の終わりに、私(訳注:著者 Marcus Sheridan氏)は、自分の人生を永遠に変えることになる一冊の本を手に入れました。それは、HubSpot 創業者であるブライアン・ハリガン氏とダーメッシュ・シャア氏の共著「インバウンド・マーケティング」です。最近彼らは、現在の重要なマーケティングのトピックや疑問と未来への展望を追加してこの本を改訂しました。

改訂版の出版に際して、HubSpot社 CEOのハリガン氏(5年以上にわたる私の友人)にインタビューをする機会を得ました。皆さんが普段疑問に思っていることや眉を吊り上げるかもしれない質問などいくつか厳しい質問をすることができました。

楽しんでお読みいただけて、とても価値のあるインタビューとなりました。

 ブライアン・ハリガン CEOとのQ&A

1.「インバウンド・マーケティング」の初版を振り返って、今から考えると「ああ、あれは空振り三振だったな」と思うのが一つあるとすればそれは何ですか?

私達はDiggを過大評価していたと思う(もう無くなったし)。そしてLinkedInの重要性を過小評価していた。Diggは「イノベーションのジレンマ」の典型例と言える。既存ユーザーが求めるものに完全にフォーカスしていた。つまり木を見て森を見ずの状態である。そして、FacebookとTwitterのとどまらない人気とバイラル性はDiggの速やかな終焉を意味した。

一方、初版を出版したとき、ダーメッシュと私はLinkedInのグループがパワフルなマーケティングのメディアであることに気づいていた。しかし、LinkedInがインフルエンサープログラムを開始し、ソーシャルネットワークの域を超え、コンテンツ制作とプロモーションを含んだパーソナルブランディングを確立するための強力な存在になるとは思いもよらなかった。

 2. 初版で書いたことのなかで、今日においても有効であることが一つあるとしたらそれは何ですか?

マーケティングの成功における代理店の存在の重要性だね。初版では、PRに完全にフォーカスした代理店を選ぶことに関して端的に書いた。その頃は私達のパートナープログラムはまだ実験段階だったが、今では全世界で1,900の代理店にまで拡大している。代理店に関して重要な3つのポイントがある:

ダーメッシュと私は、人々の購入プロセスが変化し、企業は変化に対応するため、マーケティングと営業の方法を変えなければならない、と感じていた。私達が過小評価したのは、代理店自身がインバウンドの手法でアプローチする必要があるということだった。(彼らはそれを実行した。)現実に、私達HubSpotのパートナーの多くが、年間の売上を一社のクライアントに依存することを止め、そのパートナーのクライアントが契約を破棄して結果が測定可能であるSaaS型ビジネスに移行しても気にならなくなった。初版出版時では予想できなかった方法で、代理店の世界は変革を遂げた。

代理店の変革に加えて、マーケティング技術の大規模拡散は満たされていないニーズを市場に生み出した。企業はコンテンツを制作できる有能なライターや、効果的なリード育成と分析を設定するテクニカルマーケターを必要としている。またセールスとマーケティングの関係を理解して、企業の目標と需要の発掘を効果的に合致させるためのSLAを作成できる専門家(我々、Sales Lionのことだ!)も必要としている。結果としての移行は、企業のインバウンド活用をサポートできる代理店にとって一大チャンスを生み出した。また、素晴らしいテクニカルマーケターや有能なコンテンツ制作者が、面白くてダイナミックな代理店の仕事を継続して行うかつてない機会ももたらした。

私達は、初版でインバウンドマーケティングにより、いかにスタートアップがビジネス界の巨人の競合となりえるかも述べた。インバウンドマーケティングは、広告予算に左右されるアウトバウンドの手法ではなく消費者のマインドに訴えることでアプローチできるからだ。しかし、一般の企業にとってだけでなく、代理店にも言えることだった。5年前、小規模な店は超巨大代理店に、人材面もアカウント面でも比較にならなかったが、今は広く市場が開かれている。 Square2New BreedImpactが大規模アカウントを得て、年々急成長しているのを見るのは楽しいよ。

3. 簡単に教えて欲しいのですが、インバウンドマーケティングとコンテンツマーケティングの違いを、どのように定義しますか?

コンテンツは必要だけど、今日のマーケティングの世界ではそれだけでは不足だ。森のなかで一本の木が倒れたときにその音が聞こえる人はいるかい?誰も見ないコンテンツも同じことだ。それではユーザーの心を動かすことはできない。だから、コンテンツはインバウンドマーケティングを良い物にするための燃料にはなると思うが、インバウンドを動かすものは何かと考えるとそれは、顧客体験はもっとスムーズであるものだと見直すことだ。

HubSpotを例に取ってみよう。コンテンツ、特に、ブログとソーシャルメディアが私達の成長戦略にとって最重要だったのは確かだが、ひどく過小評価されているのは、 Website Grader、 Marketing Grader、 Twitter Graderなどの、私達のエンジニアとマーケティングのチームが作ったアプリケーションの重要性だ。フリーミアムを含む、リード生成戦略の一部としての「トップ・オブ・ザ・ファネル」のツールは、私達のモデルを理解してもらうために非常に重要だった。そして、彼らのWebサイトやソーシャルメディアでのプレゼンスが、営業担当者との会話や購入のコミットをできずに立ち往生しているかを示すことができた。

私に言わせると、コンテンツマーケティングとインバウンドマーケティングには大きな違いがある。コンテンツは両方にとって基盤となるが、インバウンドマーケティングはコンテンツにとどまらず、顧客とのやりとりにおけるすべての要素をカバーする。

4. 今回改定された本ですが、ハリガンさんが読者に一番学んでほしいことは何ですか?

メガホンとハブの例えだね。ほとんどの人が、Webサイトとソーシャルメディアでの取り組みを、メガホンのようにメッセージを拡大して世界に伝えるブロードキャストチャンネルだと思っている。そのため、彼らは、スクリーンの向こう側に実在する人のことを考えるのではなく、「オーディエンス」のように捉えて曖昧な方法で問題解決をする。自分のWebサイトを、有意義な方法で個別の顧客と直接つながれるハブみたいに考えるべきなんだ。1:1のコミュニケーションについて考えることは、提供するコンテンツや作成するデザイン、CTA(コール・トゥ・アクション)を改善する際に役立つ。

怒鳴られているように感じずにマーケティングや販売の案内をもらうことがどんなに素晴らしいか想像できるだろう?

5. 「リマーケッタブルコンテンツ」をどのように定義しますか?

ほとんどの企業はコンテンツ作成がお粗末だ。自分達の事ばかり話し、むやみに自社製品を売り込もうとし、疫病のように衝突や論争を避ける。だから誰も彼らのブログを読まないんだ!コンテンツで成功するには、皆さんの分野で誰よりも教育的に、啓発的に、そしてエンターテイナーにならなければならない。それをするには、心から顧客の助けになりたいという気持ちや目先の人気を気にしない態度を取ること、日々のノイズに埋没しないプレゼンテーションスタイルを必要とする。際立ったコンテンツは人々の注意を引き耳を傾けさせる。友人にシェアしたいと思わせ、定期的にアクセスしたくさせるのだ。

6. 大企業と中小企業の両方において、デジタルの時代を見越したときにどのような懸念を感じますか?

どんなビジネスにとっても最大の懸念は、凡庸さへの退行だ。平均的な企業になるのにかかる時間はあっという間で、偉大な企業にならないことと同じくらいのスピードだ。私達は皆、そのことに気をつけて行動する必要がある。私はCEOとして主に凡庸な妥協を止めることに時間を費やしている。他の選択肢が「ハード」だから、または「これまでやってきたやり方だから」と普通は他の最も安全な選択肢を選ぶ。大きな間違いだ。企業の有能な頭脳陣はルールを取り上げ書き換える。皆それに習うべきだ。

7. 20年後、ビジネスオーナーの何パーセントが「インバウンドマーケティング」の意味を理解しているでしょうか?それとも、まるで日没のように視界から消え、別の何に置き換えられていると思いますか?

そういう変化球な質問がくると予想しておくべきだったな。期待通りだ。インバウンドは何十年にも渡って流通する用語だと思いたいね。未来においてはマーケティング、営業、そしてサービスの区分けが付きにくくなり、結果人々は、インバウンドを単なる一部門やアプローチとしてではなく、ビジネス自体をインバウンドとして考えるようになるだろう。その頃には君は自由世界のリーダーになっているだろうな、Marcus Sheridan君。今日は君を過小評価しないようにと学んだよ。うん、間違いない。

The Sales Lion の Marcus Sheridan 氏によるブログ記事「HubSpot CEO Discusses Inbound Vs Content Marketing and the Future of Digital」を許可を得て翻訳しました。

いかがでしたでしょうか。

初版がリリースされてから5年、インバウンドマーケティングは多くの企業によって適用され、その効果は大きく反映されています。その一方で、インバウンドマーケティングを取り巻く状況は大きな変化をみせています。

  • コンテンツ制作のための有能なライターやテクニカルマーケターの不足
  • 購買プロセスの変化により求められるようになったインバウンドマーケティング
  • ビジネス自体をインバウンドとしてとらえ、個別の顧客と直接つながるハブを形成することの重要性

これらの背景を抑えた上で改訂版の「インバウンド・マーケティング」を読むと、新たな気づきが得られるでしょう。


インバウンドマーケティング実態調査レポート