ラクス メルラボ

オウンドメディアを立ち上げる際、誰が担当するのか?という点は悩ましい問題ではないでしょうか。記事は誰が書くのか、分析や改善施策は誰が立てるのか、予算はどの部門が持つのかなど…。専任担当をつけることが難しい場合、マーケティングチームや広報担当などが兼務することが多いことが想定されます。その場合、担当者は何に注力すれば良いのでしょうか。

今回、オウンドメディアの立ち上げ後、半年で計画のKPIを達成し、現在「メルラボ」編集長を務める株式会社ラクスの芹澤はずき氏に、編集長としてのオウンドメディア運用の「コツ」についてお伺いしました。他業務と兼務しながら、編集長としてどうメディアに向き合うか、社内外の人との関わりや動かし方、成果につながるSEOを意識した記事作成のコツまで、幅広くお答え頂いた内容を前編・後編に分けてお伝えします。前編である本記事では、立ち上げの経緯から運用のコツについてお聞きします。

株式会社ラクスについて

メール配信や経費精算等バックオフィス業務のクラウドサービス、レンタルサーバなど中小企業向けに多様なサービスを展開している株式会社ラクス。主力サービス「Mail Dealer(メールディーラー)」は3,000社以上の導入実績を持っています(2015年4月現在)。同社が新たなマーケティング施策として目をつけたのが、インバウンドマーケティング。2013年9月より自社初のオウンドメディアとなる、メルラボこと「Mail Marketing Lab.(メールマーケティングラボ)」を立ち上げ、ブログ運用、ホワイトペーパーのダウンロード促進、メールでのCRM施策を実施し、半年間で見込み顧客の5%を同施策から生み出すことに成功しています。

Mail Marketing Lab.(メールマーケティングラボ)

メルラボ

目指したのは、ノウハウを伝える堅実なメディア

──なぜオウンドメディア(メルラボ)を立ち上げたのでしょうか。

始めは社長の鶴の一声でした。そこで「インバウンドマーケティング*」という考え方を知ったのですが、私自身、従来の広告の形にあまり共感できていなかったこともあり、インバウンドマーケティングの概念を知ってぜひ取り組んでみたいと思いました。その取り組みの一環としてメルラボの立ち上げに至った形です。

*インバウンドマーケティングとは、顧客に見つけてもらい、顧客が欲しい時に欲しい情報を得られる仕組みを用意しておくことで相互理解を深め、最終的に行動を促進する施策のこと。ブライアン・ハリガン(HubSpot社CEO)、ダーメッシュ・シャア(HubSpot社共同創業者)によって2005年に提唱され、導入実績社数はHubSpot社のみでも世界で19,000社にのぼります。

ラクス 芹澤

株式会社ラクス
クラウド事業本部マーケティング・クラウド事業部
芹澤 はずき氏
2012年株式会社ラクス入社以来、マーケティングチームに所属。現在メルラボ編集長として戦略から運用・分析まで責任を持つ。

 

──競合視していたメディアはありましたか?

競合は存在しない認識でした。メールマーケティングを専門にしたメディアで、しっかりと運用されているものがほとんどなかったので。ただ、競合ということではなく、目指すメディアの形として、DXブログ、LISKULなどを挙げていました。

純粋に会社が持っているノウハウを発信しているメディアです。サイボウズ式や、LIGブログのように面白い、個人的に好きなメディアもありますが、そこまでカジュアルにはできないかな、と…。

──KPIを達成するまでにはどんな課題がありましたか?

はじめの半年間は、稼働的に非常にきつかったですね。当時は私を含め2名の担当者で、週1本のペースで記事を書いていましたが、やはり始めは1記事8時間ぐらいかかってしまって。これまでの業務にインバウンドマーケティングの目標がドカンと乗っかってきたので、すごくきつかったですね(笑)。

ちなみに成果でいうと、メインKPIであるSQL*が取れてきたのが半年後でした。その他サブKPIとしてPVなどを置いており、運用し始めて3ヶ月程で成長曲線が見えてきた感じです。

*SQLとは、Sales Qualified Lead=営業対象リードのこと。詳しくはこちら

 

Interview_before_PV

図:メルラボ公開から半年間のPV推移

 

インバウンドマーケティング施策にかけた概算費用について

1. 初期費用 約750万円
(HubSpotライセンス年間費用、設定代行、ブログ構築、トレーニングなど)
2. 運用費用 約30万円/月
(HubSpotライセンス月額費用、リスティング&SNS広告費用、記事作成外部委託費用など)
・社内担当者:2名(どちらも他業務との兼務)
・支援体制:外部パートナーによる戦略立案サポート、運用サポート
※費用はプランによって異なります。

──企画をしてブログ記事をつくるといった、コンテンツ制作はこれまでもされていたのですか?

いえ、ほぼしていなかったです。ブログを書くのも初めての経験でした。ただ私が所属するマーケティングチームでは、営業資料を作ったり、顧客のインタビュー事例を作成するようなことをしていたので、その辺りの土台はあったかもしれません。大変だったのは、ある程度ボリュームのあるノウハウ記事を作るという部分。しばらくは外部パートナー(24-7)に記事の添削もしてもらっていました。

インバウンドマーケティングの手法として、まずペルソナを作成し、ペルソナに対応するキーワードを考え、それに対応する記事をつくっていくのですが、記事の型もいくつか決めてやっていくことであまり迷うことはなかったです。Tips、事例、データ、海外記事翻訳、便利なツール紹介、などですね。あとは営業さんから、客先でどういったことを聞かれるとか、お客さんによく聞かれることをヒアリングして、それに答えられるようなものを作っていこうと。

──運用していく中で、だんだんと読みやすいものを書けるようになっていったのですね。

そうですね。今も読みやすい記事がかけているかは心配なのですが、そこはチームでお互いに校正をするなどしてカバーしています。初めのうちはとにかく不安だったので、他の社内のメンバーに読んでもらって感想をもらったりしていました。

──メルラボを3年ほど運営されてきて、記事のネタ切れに困るような場面はありますか?

メディアの特性もあるかもしれませんが、メールマーケティングのトレンドやノウハウは日々変化していくので、ネタ切れというのは今の所感じていないです。記事の企画を立てるためのキーワードリストを定期的に精査しているので、新しいキーワードが追加されていきます。自分の頭の中の知識も同様ですが、絶えず情報を更新していくことが重要ですね。社外の人と積極的に会って情報収集していくとか、営業さんから定期的にヒアリングしていくとか。インプットの量を増やすことでネタ切れは防げるかなと思います。

 

「 見つけてもらう」SEOを意識したコンテンツ作り

運用がスタートした後担当者として気がかりなことは、せっかく作ったコンテンツが情報を求めている人に見つけてもらえず、読まれなかったらということ。検索に上位ヒットさせるためのSEOのコツについてもお伺いしました。

──検索で上位表示させるための記事の作り方、SEOのコツはありますか?

狙っているキーワードがタイトルの前半に来ていること、記事内容にちゃんとキーワードが入っているかなど基本的な点は必ず確認します。また、記事公開直後はソーシャルからの流入がメインになるのでシェアされやすいタイトルを意識し、公開から1週間程度経った後、検索にヒットしやすいようなタイトルに変更していました。

その他は、これといって特別なことはしていないですね。立ち上げ当時は1記事大体1500字程度で作成していたのですが、最近はSEOを狙うなら2500字ぐらい必要と聞き、現在は文字数を増やしています。所感としては、検索した際にビッグワードで上位に上がってきてくれるとすごく成果は出やすいですね。リスティングでも取っているようなキーワードで記事が上位表示されるようになると、SQLの獲得にはつながりやすいです。

また、過去に出した記事を実はちょこちょこ改善しているのです。例えばSEO的にリンクを修正したり、内容自体を読者に合わせて少し修正したり。そういう風にフェーズを分けて過去記事を改善していくと、トラフィックが増えますね。直後には出ませんが、数週間後に全体的なオーガニック検索からの流入がグッと上がってきます。記事の流入数推移は通常だと直線的になるはずなんですが、二次曲線的になるんですよ。過去記事がたくさんあるメディアの場合、効果があると思います。


前編では、情報を集めコンテンツを作成しながら、社内外との連携を密にすることでメルラボの基盤を整えていった編集長・芹澤氏の取り組みが見えてきました。

SEO最適化については、もし競合メディアが少ない場合にはビッグワードも狙いやすいですが、古くから運営されている競合メディアが複数ありビッグワードが占められてしまっている場合には、それらを避け、まずは他社で上位を占められていないロングテールキーワードを狙う戦略が良さそうですね。

後編では、他業務と兼務しながらそれらの地道な作業を実行し続けるコツなどについて話をお伺いしていきます。

後編:成功するオウンドメディア運用のための3つのコツ。メルラボ編集長インタビュー【後編】


今回インタビューにご協力いただいた株式会社ラクスは、インバウンドマーケティングを始めて約半年で計画のKPIを達成できたとお話ししていただきました。インバウンドマーケティングについてより詳しく知りたい担当者様向けに、導入ステップについて解説したEブックをご用意いたしました。


インバウンドマーケティング