佐口賢作

「取材ってすごく便利なツールです」。

これは、雑誌や書籍のライターとして20年以上活躍してきた、佐口賢作さんの言葉です。

「コンテンツマーケティング」「インバウンドマーケティング」という言葉をよく耳にし、それに関する記事が溢れている昨今。それらを実施するために、「ブログ」が最も重要なもののひとつであるということは言うまでもありません。しかし、記事を書くのに「時間がかかる」「新鮮味がない」「マンネリ化した」……、等々、悩みは尽きないのが現実です。

そこで、冒頭の言葉です。取材して、誰かに話を聞いて、それを誰かに伝える。このスタイルは、記事を作る最も基本的な形にもかかわらず、意外に使われていないのではないでしょうか。……というわけで、取材記事、インタビュー記事をブログのバリエーションのひとつにすべく、その道のプロフェッショナルに聞いてきました。この道20年、佐口さんの言う「便利」さとは?
佐口賢作

佐口さんの紹介

佐口賢作さん
在学中からライターの仕事を始め、それ以来フリーライターひと筋20年超。雑誌のインタビューやマンガの原作、書籍、ウェブ媒体等、さまざまなメディア、分野で活躍中。

 

取材の下調べとは具体的にどのようにしますか?

最低限の「プロフィール」は確実に押さえて、「生年月日」、「出身地」、「最初の就職」、「転職のタイミング」を簡単にまとめておくと、話をするにもアクセントとして使えますよ。あと、意外に大事なのが、「名前の読み方」の確認です。大谷さんが「おおたにさん」か、「おおやさん」か。山崎さんが「やまさきさん」か、「やまざきさん」か。間違えられると気分のいいものじゃないですから。

質問案はいくつ用意しますか?

3つか4つ。最低限これは聞きたいなっていう希望です。記事の目的を達成するために必要なものを3つぐらい用意しておきます。

とはいっても、質問少なくないですか?

そうなんです。過去に取材を何回も受けている人、そもそも話すことが仕事に近い人は、いっぱい質問案を持っていく必要はないですね。経営者やタレントさんみたいな人たちです。一方で、あまり話す機会のない人たち、例えば、普通のビジネスマンや学生さんの場合は、質問案をたくさん用意してぶつけてあげたほうが、答えやすくなりますね。

取材時の道具やツールは?

取材ノート
僕が使うものはノートとボールペンとレコーダーだけです。
レコーダーはかなり安いものなんですけど、機能がシンプルなところは気に入っています。取材が終わったらすぐパソコンに入れますよ。

テープ起こしをして原稿にするまで時間は?

1時間のテープを起こすのに3時間半ぐらい。原稿は、どれぐらいの長さにするのかにもよるんですけど、本番の原稿も3.5時間でまとまるんじゃないかな。

テープ起こしのTIPSはズバリ?

ごめんなさい、ティップスとかないです。これは『根気』です。記事の性質にもよりますが、僕は基本的に全部起こします、なんなら「初めまして」の部分から。

なぜ全部起こす必要があるのですか?

一旦起こしていると、取材の内容が脳に入って、記事の構成が見えてくるんですよ。そうすると、インタビューの前半に出た話、中盤に出た話、終盤の話が実は縦に串刺しできる話だなってことがぼんやり浮かぶんですよね。そうすると原稿を書くときに、すごくスピードがあがります。

もう一つの理由は、テープ起こしをするたびに、確実に取材がうまくなっていくからです。
「こんなに自分は矢継ぎ早に質問してるんだ」とか、「この質問いらないじゃん」、「あれ、ここで黙っているのに怖くなってこれ聞いたけど、この質問いらないんじゃ?」などと、全部起こしていると反省ポイントがみつかって一人反省会が行われます。凹むんですけど、全部起こすと次に活かせるんですよね。

文章を書くときのポイントは?

最初の3行、4行で何かを仕掛けるということは常に考えていますね。ウェブでいうと、冒頭のボディコピーみたいなのが一番大事なんじゃないかなって思います。そこに、読んだ人がひっかかる言葉の要素を入れる。続きも読みたいなとか、これ役に立つな、と思うようにキーワードや情報を最初にもりこむこと。大切なのはこちらの伝えたいことをいきなり出さず、その文章を読んだとき、相手の心がどんなふうに動いて欲しいかを意識することです。

文章を書く上で気をつけていることは?

専門用語はなるべく使わないようにしています。身近な人である母親、兄弟、彼女彼氏とかお嫁さん旦那に説明してわかってもらえるレベルに書きます。

文章のトレーニング方法はありますか?

情報をコピペするのは良くないですけど、文体をコピペするのは悪くないですよね。たとえば、これは面白い書き方のウェブのページがあったとしたら、全部コピーして、その面白いリズムを使って、名詞だけ自分の伝えたいものに挿し替えてトレーニングすることで、その面白さの一部を学べるかもしれません。

書けない人が一番ぶつかるのは、「うまく文章が書けない」、「一行目からちゃんとしないといけない」と思ってすごく時間がかかっていると思うんですよね。3行書いては消して、いやこうじゃない、もっといい方法があるはずだと苦労してしまう。それは本当に時間がもったいないので、雑でも書いてしまうのがいいんじゃないでしょうか。

取材のもっとも大事なことは何ですか?

「相手がどんな人なのか」、「どんなことを聞くか」を想像しがちなんですが、でも実はそうじゃなくて、「誰が読むかどんな人に読んで欲しいのか」、「どんなコンテンツだと思われたいのか」、先にきちんと取材者がイメージしてもっておくことが大事ですね。面白い話が聞けそうとふわっとした感じのままだとぼんやりしてしまう、それって当たり前じゃんって思うんですが、意外と現場ではそういうことが起きがちです。
どういう人がこの記事を読み、どのように役に立たせたいのか取材者がしっかり掴んで話を聞かないと、せっかくでたおもしろい話が活かせなくなってしまいます。
企業の中のコンテンツ作りであれば、記事の目的があるので、取材者がそれを把握しておくことが最も大事な準備です。

仕事への思いや、やりがいを聞きたいです

多種多様な人に会えることですね。偉い人、うるわしい人、何やってんのかわからない人にも会えるので、取材ってすごく便利なツールだと思います。
それは社内の社員の人でも同じことだと思います。たとえば、社長とゆっくり話すという機会は会社が大きくなればなるほど、少なくなるけれども、取材だって言えば1時間はくれるでしょう。そういう意味で誰にでも会えるんですよね。

もう一つは、結果が目に見えることです。原稿にするので、原稿がおもしろいかどうか自分で読めばわかるって意味では結果がすぐわかりますし、それが雑誌なりネットなりに載り、読者さんなどから、何らかの反応がもらえるのは気に入っています。

佐口賢作

では最後に、佐口さんのこれからの目標は?

僕、ライターの仕事は定食屋だと思っています。想像上の定食屋さんは昭和の定食屋さんで、お客さんが来て洋食から中華まで揃えていて何を注文してもそこそこうまい、そして喜んで帰ってもらう感じの状態で仕事を続けたいなあと思っています。

あと書籍を聞き書きで作るお仕事もしているので、長いスパンで読んでもらえるようなロングセラーを生み出したい。

そしてめざせ100万部です(笑)。

インタビューの感想
インタビューから記事にするまでの過程を踏まえて思ったことは、対話の相手から自然とでてきた「言葉」は、どんな言葉よりも「説得力」があるということです。
したがって、インタビュー記事を用いると、伝えたいことを読者に納得させやすいので、これもインタビュー記事の一つの「便利さ」であるなと感じました。


インバウンドマーケティング入門01 ATTRACT(興味を喚起)